「致し方ない」と「やむを得ない」の違いとは?
ビジネスでの使い方や例文などを交えながら、分かりやすく解説していきたいと思います。
「致し方ない」とは?
はじめに「致し方ない」について解説していきます。
「致す」は「する」を意味する言葉です。
また「し方ない」は「する方法がない」を意味します。
これらのことから「致し方ない」は「致す方法がない」であり、「する方法がない」なのです。
では、これを通常使う口語表現に変えるとどうでしょう。
「致し方ない」は「しかたない」や「しょうがない」と言い換えることが可能です。
「する方法がない」が転じて「しようがない、やりようがない」となっていることが分かるのではないでしょうか。
「やむを得ない」とは?
つぎに「やむを得ない」を解説します。
「やむ」は漢字にすると「止む」と書きます。
このことから分かる通り、何かを「止める、中止する」の意味を持ちます。
また「得ない」は「しかない」との意味を持ちます。
これらのことから「やむを得ない」は「止めるしかない、中止するしかない」という意味を持っているのです。
そして、「止めるしかない、中止するしかない」状態が示すのは「しようがない、やりようがない」と同じく、「しかたない」となるのです。
「致し方ない」と「やむを得ない」の違い
それでは「致し方ない」と「やむを得ない」の違いはどこにあるでしょうか。
これは、完全に表現だけの違いと考えてよいでしょう。
どちらも「仕方がない」を意味しているからです。
ただし、ニュアンスの違いはあります。
「致し方がない」は「致す」、つまり「する」というポジティブな言葉をベースにしています。
しかし、一方の「やむを得ない」は「中止する、止める」というネガティブな言葉がベースになっているのです。
そのため、あえて言えばですが、ビジネスで使った場合には「やむを得ない」のほうが「あきらめるのが早い」との、マイナスなイメージになりやすい傾向があると言えるでしょう。
「致し方ない」の例文
ここでは「致し方ない」の例文を挙げていきます。
例文からも分かる通り、語尾を敬語にする場合は「です」と付与したり「ない」を変形させることで対応が可能です。
・『致し方ない』
・『その件であれば、致し方ない』
・『その選択でしたら、致し方ありません』
・『資料の内容については、致し方ございません』
「やむを得ない」の例文
ここでは「やむを得ない」の例文を挙げていきます。
例文から「致し方ない」と全く同じ使い方をしても成立することが分かるはずです。
ただし、語尾の変換の仕方が全く同じにはならないので、注意深く使用する必要があります。
・『やむを得ない』
・『その件であれば、やむを得ない』
・『その選択でしたら、やむを得ないでしょう』
・『資料の内容については、やむを得ません』
まとめ
このように「致し方ない」と「やむを得ない」は同じような場面で、同じように使用できる言葉です。
しかし、意味は同じでも相手に与える印象は少し異なります。
それをしっかり理解して、どちらを選択するかを決めるとよいでしょう。