「すべからく」と「おしなべて」の言葉の意味を混同している方も多くいらっしゃるようです。
今回はこの2つの言葉の意味や例文をご紹介いたします。
「すべからく」とは
「すべからく」は漢字で書くと「須らく」となり、本来は「すべからく~べし」や「すべからく~べき」と使われます。
「~するべし」が元になっており、「当然そうするべき」「ぜひともそうするべき」という意味になります。
必須という単語に須が使われていることからもわかるように、「必ず」や「当然」というニュアンスです。
「すべからく」という音のために「すべて」という意味だと誤解している方が多いようですが、漢字で書くとわかるように「全」ではなく「須」です。
「全て」という意味ではありませんので注意が必要です。
「すべからく」の類語には「余儀なく」や「当然」、「無論」などがあります。
「おしなべて」とは
「おしなべて」は漢字で書くと「押し並べて」となります。
「総じて、一様に」という意味になります。
押し付けて並べられ、どれもほぼ同じように見える様子をイメージすると覚えやすくなります。
「並」という漢字が使われていることからわかるように、「必ず全てというわけではないが全体に渡って、概して、広く一般的に、大概は」というニュアンスです。
類義語には「概ね」(おおむね)「総じて」などがあります。
「すべからく」の例文
『政治家はすべからく国民の声に耳を傾けるべきだ』
政治家は当然国民の声に耳を傾けるべきだ、という意味です。
全ての政治家は国民の声に耳を傾けるべきだ、または政治家は全ての国民の声に耳を傾けるべきだ、という意味ではないことに注意してください。
『彼はすべからく練習に励んでいたから優勝するのは当たり前だ』
彼は当然練習に励んでいたから優勝するのは当たり前だ、という意味になります。
『母親はすべからく子どもに関心がある』
母親は当然子どもに関心がある、という意味です。
「おしなべて」の例文
『ハンバーグはおしなべて子どもに人気のメニューだ』
ハンバーグは一般的に子供に人気のメニューだ、という意味です。
『この店の商品はおしなべて高品質だ』
この店の商品は概ね高品質だ、という意味です。
『子どもはおしなべて元気なものだ』
必ず全員ではないが子どもはたいてい元気だ、という意味です。
「すべからく」と「おしなべて」の違い
例文1『人間はすべからく善良だ』
例文2『人間はおしなべて善良だ』
「すべからく」は「当然~すべき」という意味で、「おしなべて」は「総じて、一般的に、概ね」という意味です。
そのため、例文1は人間は当然善良であるべきだ、という意味で、例文2は人間は概ね善良であるものだ、という意味になります。
似て見えても意味が違うことに注意しましょう。
まとめ
「すべからく」は「当然、ぜひとも~すべき」、「おしなべて」は「一般的に」という意味です。
「すべからく」も「おしなべて」も、あまり会話で聞くことのない表現かもしれませんが、意味の違いは覚えておくべきでしょう。
特に「すべからく」を「すべて」と誤解している方は多いようですので注意が必要です。