「ひとえに」と「単に」はどのように意味が異なるのでしょうか。
今回は、「ひとえに」と「単に」の違いについて解説します。
「ひとえに」とは?
「ひとえに」とは、「ただそれだけである」という意味の言葉です。
「ひとえに」は漢字で「偏に」と書きます。
「ある一方に偏っている」というのが「ひとえに」の本来の意味合いです。
万遍なくバランスの良い様子ではなく「特定の部分にのみ比重が偏っている」ことを表す言葉ですがそこから転じて「それだけに尽きる」という意味で使われています。
ビジネスの現場では「ひとえに」という表現はお礼や感謝を述べるときに用いられます。
そのことだけが原因だったりそれだけが理由だったりするときに「ひとえに」という言葉を用いて相手に謝意を示します。
ポジティブな意味で使われる言葉であり「ひとえに」という言葉をネガティブな意味合いで使うことは皮肉や嫌味以外では通常ありません。
副詞である「ひとえに」には後に続く言葉の内容それのみであることを強調します。
ビジネスの定型文としては「ひとえに~のおかげ」という形で対象に対する感謝やお礼を表す表現として使われます。
「単に」とは?
「単に」とは、「ことさら取り立てるまでもなく単純に」という意味の言葉です。
「複雑な説明をする必要がなくそれのみでいい」という意味合いで使われる言葉が「単に」です。
物事の内容を詳しく説明して理解を得る必要がなく短い内容や少ない言葉だけで意味が伝わるときに用いられる表現です。
「単に」という言葉の後にはシンプルな説明や解説が続きます。
内容が一つだけで混じっているものがなくシンプルである様子をあらわす言葉です。
ビジネスの現場では詳しく説明するまでもないことやとても簡単でわかりきっていることを表現する言葉として「単に」が使われます。
一般的には複雑な理由や深い事情などを推察する言葉を打ち消す意味合いで「単に」という言葉で言及するまでもないことを述べるときに用いる表現です。
「ひとえに」と「単に」の違い
「ひとえに」と「単に」の違いは「こめられた気持ち」です。
「ひとえに」という言葉は相手に対する感謝や謝罪の気持ちを伝えるときに用いられます。
もともとの意味は「ただそれだけ」「それのみ」という他になく一つだけであることを意味しますが、そこから転じて限定した形で気持ちを伝える表現として使われています。
「単に」というのは複雑ではなく単純であることをあらわす言葉で感謝の気持は含まれていません。
相手の推測や予想を否定する形で使われることが多いため場合によっては不快感を与えてしまうこともあるそっけない表現です。
「ひとえに」の例文
・『プロジェクトが成功したのはひとえに部長のお力添えのおかげです』
・『契約が成立したのはひとえに君の努力によるものだ』
「単に」の例文
・『なにか深い考えがあったわけではなく単にめんどくさかったので手順を省いだだけである』
・『自宅待機といえば聞こえはいいが単に謹慎させられているだけだ』
まとめ
「ひとえに」と「単に」は意味合いに近しい部分があるものの含まれるニュアンスには大きな違いがあります。
ビジネスでは言葉に込められた意味合いひとつで関係が大きく代わってしまうこともあるので言葉選びに注意しましょう。