「(誰かが)試験に合格した」ことを敬語へ直すとき、「お試験に合格なさいました」という表現は果たして正しいのでしょうか?
「お試験に合格なさいました」という敬語表現は正しい?
「お試験に合格なさいました」という敬語表現は誤りになります。
「お試験に合格なさいました」はどこがおかしい?
「お試験に合格なさいました」という言い回しのおかしい点は「お試験」にあります。
「お手紙」や「お名前」、「ご連絡」や「ご報告」のように、名詞・形容詞・形容動詞に接頭語の「お、ご(=御)」をつけることによって敬語表現となります。
しかし、何でもかんでも「お」や「ご」を付ければ良いというものではなく、「お」や「ご」を付ける場合と付けない場合があるのです。
一例として、公共のモノに対して「お」や「ご」は付けません。
したがって、「お公園」や「お病院」という表現は誤りとなります。
また、同じく外来語にも「お」や「ご」は付けません。
したがって、「パソコン」を「おパソコン」と表現したり、「スマホ」を「おスマホ」とは表現しません。
また、他の敬語と重複して「お」や「ご」を使った場合、「過剰敬語」となってしまい、これも誤った表現となります。
では、「お試験に合格なさいました」の「お試験」だとどうでしょうか?
「合格なさいました」という表現で相手の行為に対する敬語は成立しているので、さらに「試験」に「お」をつけて敬語表現に直すことは「過剰敬語」に当たると言えます。
ちなみに、子供が幼稚園や小学校への入園・入学試験に臨むこと「お受験」と言いますが、これは敬語表現ではなく、「お絵描き」や「お化け」のように幼児語としての「お」をつけることによって「(小さい子の)受験」を言い表した俗語的表現です。
「お試験に合格なさいました」の正しい敬語表現とは?
「お試験に合格なさいました」を正しい敬語表現に直すと、「試験に合格なさいました」になります。
「○○なさる」とは、「○○する」の尊敬語です。
したがって、「合格する(した)」を尊敬語に直すと「合格なさる(なさった、なさいました)」になります。
先述したように、「合格なさいました」という表現で敬語は成立しているので、重ねて「試験」に接頭語の「お」を付ける必要はありません。
まとめ
「お試験に合格なさいました」は誤った敬語表現です。
名詞や形容詞、形容動詞に「お、ご(=御)」をつけることによって相手を敬った表現になります。
しかし、「お試験に合格なさいました」の場合、「合格なさいました」ですでに敬語が成立しているため、「試験」まで敬語表現に直してしまうと「過剰敬語」となってしまいます。
したがって、「試験」には接頭語の「お」を付けず、「試験に合格なさいました」とするのが正しい敬語表現です。